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検討委員会、中間答申を提出
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3.有床診療所のあり方と法制上の位置づけ

 

前述の有床診療所の理念を実現し、国民に質の高い医療を提供していくために、有床診

療所は法制上、次のように位置付ける必要があるものと考えられる。

(1)「診療所病床」は外来医療・在宅医療と一連で入院医療を実践する19床以下の

小規模病床

診療所病床は、プライマリケアの実践において、外来医療、および在宅医療を補完

するための病床である。地域においては、有床診療所で的確に対応できる幅広い患者

層が現実に存在する。また、患者の病状の推移等から、居宅における療養よりは入院

して管理した方が適切な場合に、かかりつけ医として的確に受け入れることで、患者・

家族の不安を取り除き、病状の変化によっては迅速に次の対応が取り得るようにする

ことは、病院の入院医療とは別の意義を有する。このように、「病院病床」と「診療所

病床」とは果たすべき機能が同じものではなく、別の概念で捉えるべきである。ただ

し、病院と診療所が互いに補完する関係にあることは言うまでもない。

(2)1人以上の医師と必要数の看護職員を配置

1人の医師が、外来医療から往診や訪問診療、そして入院医療まで対応できること

が有床診療所の基本的な特徴であるが、複数の医師により専門医療、在宅医療等を実

践するなかで病床を最大限利用している有床診療所も存在する。また、他の診療所の

医師との密接な連携により、24 時間対応の医療を提供している場合も少なくない。

看護職員については、入院医療を提供するために必要数を配置するが、その基準は

法律等で定めるのではなく、地域の実情や受け入れる患者の特質を踏まえて柔軟に運

用されるべきである。また、診療報酬においては、配置された職員数に応じた評価が

必要であることは当然である。

(3)病床区分を設けず急性期、慢性期、そして終末期医療にも柔軟に対応し、地域ケア

も支援

現在、診療所病床は、一般病床、医療療養病床、介護療養病床の3種類に区分され

る。最大でも19床しかない病床をさらに区分して運用することは、制度運用上の合

理性・効率性を欠いている。従来、それぞれの制度の制約を受けた運営を迫られてき

たが、これが地域の貴重な医療資源である診療所病床を有効に活用できていない最大

の理由の一つである。

高齢者は様々な疾患やニーズを抱えており、医療も介護も同時に必要となることは

極めて一般的な成り行きである。このような中で、医療保険・介護保険のそれぞれの

制度に基づいた病床区分に拘泥することは、患者本位の医療・介護の提供を困難にし、

有床診療所にも大きな負担を強いている。今後はさらに高齢化率が上昇し、高齢者の

独居、または高齢者夫婦世帯が著しく増加することが見込まれる中で、地域における

身近な医療施設である有床診療所において、地域医療を行い、かつ地域ケアを支援す

る病床の運用が強く求められている。有床診療所が、地域住民のために、医療から介

護支援に至るまで、病床を区分することなく柔軟に対応できるようにすべきである。

それが、超高齢社会における地域住民の安心・安全な医療の確保につながると言える。

(4)小規模施設に相応しい独自の診療報酬体系

有床診療所の診療報酬について、国は従来から病院と比較した施設基準や医師・看

護職員等の数的な違いを根拠に極端に低く設定し、他方、施設基準においては「病院

モデル」を求めてきた。最大でも19床という小規模施設である有床診療所に、病院

に適用されている考え方と同じ診療報酬体系を設定すること自体、そもそも不合理で

ある。有床診療所は、その理念や機能の観点からも、決して病院のミニ版ではない。

有床診療所を、今後の地域医療・地域ケアにおいて必須の医療施設として位置付けて

存続させるには、永続的に運営が可能となる独自の診療報酬体系を導入しなければな

らない。そのためには、医療と介護のそれぞれについて、要員数と患者数との比率で

入院基本料を定めるような病院に適用されている考え方とは別に、有床診療所には多

様な患者を柔軟に受け入れることができる、簡素で実情に合った診療報酬体系とする

必要がある。

また、新たな有床診療所の制度が定着して発展してゆくためには、若い次世代の多

くの医師が参入できるような、魅力ある診療報酬体系としなければならない。

有床診療所の現状が改善されなければ、今後、若い世代の医師の参入はほとんど期

待できず、継承すらも難しい。医師の地域における役割や努力が正当に報われ、小規

模であっても運営が成り立つ有床診療所固有の診療報酬体系を確立すべきである。さ

らに付言をすれば、有床診療所は医療施設であり、医療保険だけで成り立つ診療報酬

体系でなければならない。

(5)基準病床数の柔軟な運用と医療計画における役割の明確化

平成19年1月施行の改正医療法により、有床診療所の48時間規制が撤廃される

とともに、診療所の一般病床にも基準病床数制度が適用されることとなった。ただし、

特例が設けられ、在宅医療、へき地、小児・周産期その他地域で特に必要であり、医

療計画に記載され、または記載されることが見込まれる診療所の一般病床の場合は、

病床過剰地域か否かに関わらず、届出により設置することができるとされている。

各都道府県の医療審議会において、必要な病床であると認められれば設置できるが、

実際には行政担当者の硬直的な解釈により、各都道府県での医療審議会に諮られる前

の事前協議で却下されるケースもあり、有床診療所の新規参入が困難となっている現

状がある。基準病床数制度の運用については、有床診療所の新規開設が阻害されない

よう、各都道府県の行政には適切な解釈の徹底と柔軟な対応を求めたい。また今後は、

地域主権の考え方に沿って、各都道府県が地域の実情に応じた有床診療所の基準病床

数等を設定できるようにすべきである。

現在、国においては、医療計画の見直しの議論が行われているが、今後の地域医療

の基本的なあり方として施設間連携を重視した地域完結型医療を目指している。前述

の通り有床診療所は各地域の実情に応じて様々な役割を果たしており、医療計画にお

いてもその役割を明確に位置付けて記載される必要がある。今後の医療計画の基本的

方向は、連携体制の確立によって地域において切れ目のない医療が提供される必要が

あるとされており、有床診療所は病院病床だけでなく、在宅医療や介護施設との連携

強化によって、まさに切れ目のない医療を実現する重要な役割を担い得ると言えるの

である。

 



最終更新 (2011年 7月 22日(金曜日) 15:50)